【確率の罠】「ガチャ確率計算機」作者が教える ~これがガチャの落とし穴だ!~

本記事では、ソシャゲ(スマホゲーム)のガチャに潜む「落とし穴」を、数学と心理学の観点から分かりやすく&詳しく解説しています。

確率1%のガチャを100回引けば絶対1回出る?!

まず、ガチャでよくある「排出確率1%なら、100回引けば絶対1回出るでしょ!」という勘違いから解説していきます。

たしかに1%×100=100%と計算すれば「確実に1回出る」と思ってしまいがちですが、この計算では「確実に」出ることを保証するものではありません。

例えば、コインを10回投げたときのことを考えてみましょう。

表と裏が出る確率はどちらも2分の1ですから、表と裏 どちらも5回ずつ出るはずですね。

計算上は表も裏も5枚ずつ出るはずだが、ばらつきがある。

しかし実際は表が7回も出たり、逆に2回しか出ないこともあります。

ガチャも同じで、偏りがあります。

「1%×100=1」「2分の1×10=5」のような計算で出る数字は期待値(きたいち)といいます。

期待値は「大体これぐらい出る」という あくまで平均的な目安で、「出る」という確証を得るものではありません。

では、まずはいきなり100回引いたときのことを考える前に、2回引いたときのことを考えてみましょう。

排出率1%のガチャを2回引いて、当たりが出る確率は?

ガチャを2回引いた場合、あり得るのは「どちらもハズレ」「1回目だけ当たり」「2回目だけ当たり」「1回目も2回目も当たり」の4通りですね。

図に表すとこうなります。

2回ガチャを引いたときの組み合わせ

当たりが1回以上出るパターンは4通りのうち3通り。

その合計は0.99%+0.99%+0.01%=1.99%です。

ガチャを3回引いた場合も考え方は同じ……と言いたいところですが、3回引いた場合は組み合わせが8通りになり、計算が面倒くさそうですね。

そこで、「すべてハズレ」のパターン以外はどこかのタイミングで最低1回は当たりが出ていることに着目します。

3回ガチャを引いたときの組み合わせ

出た場合の「何回目に出たか」「何回出たか」は考える必要はなく、100%から「すべてハズレる確率」を引けば1回以上出る確率を求めることができます。

3回引いた場合は、「すべてハズレる確率」は99%×99%×99%で97.0299%。

100%からこの97.0299%を引いた2.9701%が「1回以上当たりが出る確率」というわけです。

さて、ここからが本題です。

排出率1%のガチャを100回引いて、当たりが出る確率は?

まずは100回すべてハズレを引くパターンの確率を求めましょう。

計算式は99%を100回掛けた 0.99100 ですね。

さっそく計算してみましょう。

0.99の100乗の計算結果の画像
※「0.99100」と「0.99^100」は同じ意味

0.991000.36603…

そうなんです!

じつに約36.6%の確率で「1%を100回引いても1回も出ない」のです!

もちろん当たりが出る確率(この問題の答え)は残りの約63.4%です。

ただ、この63.4%の中には1回以上、つまり3回も4回も出ている人も含まれています。

そんな幸運な人がいる一方で、1回も出ていない人が3人に1人以上いるという不公平さ、理不尽さ……。

排出率1%のガチャを100回引いたときの、1回も出ない人・1回以上出る人のグラフ

現実とは残酷なものですね…。

しかし恐ろしいのはここからです!!

「当たりが1回も出ない」確率は何回目でゼロになる?

では、この確率1%のガチャを200回、300回と引いていったとき「1回も出ない(すべてハズレる)」確率はどこまで減るのでしょうか?

下記の表にまとめてみました。

回数1回も出ない確率
100回約36.603%
(約3人に1人)
200回約13.398%
(約7人に1人)
300回約4.904%
(約20人に1人)
400回約1.795%
(約56人に1人)
500回約0.657%
(約152人に1人)

なんと、500回引いても約0.657%の人(約152人に1人)は1回も当たりが出ません

もっと回数を重ねればさらに減りますが、決してゼロにはなりません。

「◯回引けば絶対に出る!」という保証はできないのです。

ガチャ確率計算機について

姉妹サイト「イクナガ ツールズ」では、ガチャの確率を計算できるツール ガチャ確率計算機を公開しています。

この計算機は、

  • 目当てのものが入手できる確率
  • 入手に必要な試行回数・金額
  • 実際の出現率のばらつき

などが分かります。

インストール不要&無料で使えますので、ぜひお気軽にご利用ください。

参考 ガチャ確率計算機イクナガ ツールズ

やめたいのに やめられない?! 後に引けなくなる「ガチャの魔力」

ここからは確率の話ではなく、ガチャで陥りがちな心理状態について解説していきます。

突然ですが質問です!

もしガチャを何回引いても出なかった場合、あなたならどうしますか?

  • 「次こそ出るかも!」と引き続ける
  • 「もういいや」と諦める

引き続ける方に質問です。

たしかにあと1回引けばポロッと出るかもしれませんね。しかし、財産が尽きるまで回しても出ない可能性もありますよね…?

そうなったら後悔しませんか?

諦める方に質問です。

なるほど、諦めも肝心ですよね! でも、あなたがガチャに費やしたお金、もったいなくないですか? このままだと今まで使ったお金を全部ドブに捨てたようなものです。

取り返さなくていいんですか?

 

……意地悪な質問をしてごめんなさい(笑)

実はこれ、名前のついている心理現象なんです。

その名も「コンコルド効果」

コンコルド効果とは?

コンコルド効果(埋没費用効果)とは、このまま続けたら損失が拡大することは分かっているけど「ここで止めてしまったら今まで投資したお金や時間、労力がすべて無駄になってしまう…!」と、やめるにやめられない状態に陥ってしまう現象のことです。

超音速旅客機コンコルドの商業的失敗がその名の由来です。

コンコルドは採算割れが確実と判っていながらも開発費の元を取ろうと投資を続けた結果、債務(マイナス)が膨れ上がってしまい最終的に倒産してしまいました。

この心理現象は、日常生活の至るところに潜んでいます。

コンコルド効果の一例

例えば、貴重な休みの日を使って映画館で2時間の映画を観始めたら、始まって30分で「期待ハズレだな…」と感じたとしましょう。

このとき、映画を観続けるのか、もしくは映画館を出てしまうのかの選択を迫られます。

ここでポイントになるのが、どちらの選択をしてもチケット代と映画を観ていた30分は戻ってこないということです。

つまり、チケット代と30分は判断基準に入れず、「このあと面白くなるかもしれないから最後まで観よう」や「1時間30分を有意義に使いたいからもう帰ろう」などと判断するのが合理的です。

しかし多くの人は、もうどうにもならないチケット代や映画を観ていた30分のことを考えてしまい、「チケット代がもったいないし、もう30分も見たんだから最後まで見よう…」という合理的ではない判断をしてしまいがちです。

後にも先にも引けなくなったらどうすればいい?

では、「後にも先にも引けない」という状態に陥ってしまったら、どうすればいいでしょうか?

正解は、いさぎよくやめることです。

仮に5万円を溶かして目当てのものが出なくても、そこで止めておけば損失は5万円だけで済みます。

そのまま続ければ、損失は増えることはあっても減ることはありません。

そして損失が増えれば、もっとドツボにはまります。

「今度こそ出るかもしれない」「ウン万円も費やしたんだから」と息巻いているうちは、この悪魔のような呪縛(じゅばく)から逃れることはできません。

残念なことに、ガチャはあなたがこれまでいくら払ったかどうかなんて知りません。

たくさんガチャを引けば「今度こそ出るかも!」と思ってしまいがちですが、それも気のせいです。

排出確率自体は 一番最初に引いたときと同じですからね!

この先「もっと」後悔するくらいなら、引き返せるうちに「ちょっと」後悔しておきましょう!

余談:Twitterのガチャ報告には気をつけよう!!

TwitterではFGO、デレステ、グラブルなどのガチャの結果を報告する人をよく見かけます。

それらを人柱にガチャを回すか考える人も多いと思いますが、注意したいのは結果が良かったときだけ報告する人が多いという点です。

例えば10連ガチャの10回目(100回目)で出た場合、9回目までのスクショも全部載せる人は少数派で、ほとんどの人はその10回目のスクショだけを載せているはずです。

そんな引き当てた人の喜びのツイートをたくさん見ると「自分にも出せそう!」と錯覚してしまいがちですが、実際はそうでもありません。

あれはいわば、幾多の屍の上に成り立っているシロモノです。

ガチャは氷山の一角

余談2:勝手に質問回答コーナー

ここからは、聞かれてもいない質問に答えていきます。

「ガチャ確率計算機」を作ろうと思ったきっかけは?

ピグライフという農園ゲームで「収穫時にまれに出現するレア素材をクエストに必要な数だけ集めるには、だいたい何回くらい収穫する必要があるのか?」というのを知りたかったためです。

当時、1回以上出現する(もしくは1回も出ない)確率を調べるツールはありましたが、「X回回してX個出る確率はどれくらい?」「X個集めるには何回試行を重ねればいいのか?」ということは分からなかったので、二項分布を使って制作しました。

参考 二項分布Wikipedia

もともと自分だけ使う予定でしたが、ちょうどソシャゲの「コンプガチャ」が社会問題化していたのもあり「ガチャ確率計算機」という名前でリリースしました。

作者は「爆死」したことあるの?

あります。

私はソシャゲは基本無課金ですが、当時大好きだったキャラクターの最上位レアリティが登場した時に2万円使っても来てくれず、諦めたことがあります。

「2万程度では爆死とは言わない!」と思う方もいるかもしれませんが、私はそれ以上やる気にはなれませんでした。

ちなみにそのゲームは、この爆死の半年後くらいにサービス終了してしまいました。

今思えば、2万で済んでよかったと思います。

こんな記事書いて、ソシャゲを潰したいの?

ソシャゲを支えている「廃課金」と呼ばれる人たちは、

  • 出るまで回せば100%
  • 3000円払えば無料で10連回せる
  • これまで課金した額で車が買えるが、車は歌わないし踊らない
  • ダイヤもルビーも何にも買ってはやれんけど、ソシャゲ内でなら思考が止まっているから余裕で買うよ 18000個で980000円

などの名言(迷言)を連発する人たちです。

そういう人はこの手の記事は読もうともしませんし、仮に読んだとしても「うるせーーー!!!」と言いながら元気に爆死することでしょう。

彼らのおかげで、我々は無課金・微課金で遊び続けることができています。

いつもありがとうございます!!


ということで、今回はソシャゲのガチャに潜む落とし穴を解説してきました。

ソシャゲは「札束で殴り合うゲーム」と表現される通り、自分の望み通りにしようとすると多額の資金が必要になります。

自分のお財布と相談しつつ、無理のないソシャゲライフを送りましょう!

読者の皆様に、良い「引き」が訪れますように――。

それではまた!